あなたがいてこそ (2010):映画短評
あなたがいてこそ (2010)ライター2人の平均評価: 4.5
ぜひジャッキー・チェンにリメイクしてほしい!
昨年、奇想に満ちた情け容赦ない復讐劇『マッキー』で、テルグ語映画の変貌ぶりを見せつけてくれたラージャマウリ監督。彼の前作にあたる映画らしいが、インドにありがちな血で血を洗う血族内抗争を扱いながらも、途中から「いかに主人公は敷居から足を踏み出さず邸内に居座り続けられるか」を延々と試行錯誤するシチュエイション・コメディに転換。と同時に非常な既視感に襲われるのだ…これ、『荒武者キートン』のほぼリメイクじゃないか(笑)。ヒーローこそボリウッドばりのイケメンマッチョでも、ラジニカーント風の絶対的カリスマ性もないものの (ヒロインは美人というより愛嬌たっぷり)独特のキュートがある。「自転車くん」も可愛い!
インド社会の暗部をミュージカル・コメディに昇華した傑作
基本的には歌あり踊りありロマンスありのミュージカル・コメディ。ダンス・シーンの流麗なカメラワークやファンタジックな演出は見事だし、体を張ったドタバタ・アクションとベタなギャグ満載のコメディ・シーンも痛快で楽しい。
しかし、である。作品のテーマは敵対する家族間の血で血を洗う抗争。お互いに相手の血筋を根絶やしにするまで殺し合う憎悪の連鎖が物語の背景にあるのだ。そこへ権力者に支配された村社会の閉鎖性や、古い因習に縛られたインド社会の暗部が複雑に絡む。
なので、ここで本当に笑っていいのか?と戸惑うことしばしば。それでいて、最後は爽快な気分で劇場を後にすることができる。インド映画は奥が深い。