やさしい人 (2013):映画短評
やさしい人 (2013)ライター2人の平均評価: 4
未練たらしいエンド・ソングに苦笑しきり。
なんせ『女っ気なし』の監督&主演のコンビ作だからまた冴えない男の話かというと、ま、オタク的ではあるけれどそれなりにミュージシャンとして評価もされ、それなりにちゃんと年下女性と恋もして「ヴァンサン君成長したねぇ」と思わせる。だがそれも束の間…次第にストーカー監禁サスペンスの色あいが濃くなって、オタクよりずっとタチの悪い話に(笑)。でもそれは米映画ふうのものでなく、トリュフォー的な執着の心理ドラマになってしまうのがいかにもG.ブラックだ。全編いい味出しまくってる父親役が、J.ロジエの『オルエットの方へ』『メーヌ・オセアン』以外ほとんど観たことのないB.メネズだというのも監督の所信表明だろう。
ギヨーム・ブラックの映画とは長い付き合いになりそうだ。
中篇『女っ気なし』を観た時は、不況&コミュ障世代のジャック・ロジェか……くらいの印象だった新鋭監督ギヨーム・ブラック。しかし初の長編となる本作で見せつけるのは、意外にも骨太なストーリーテリングの力だ。
内容は今回も非モテ男の恋模様である。「批評は良かったけど売り上げはいまいち」だったカルト系ロック・ミュージシャンの三十路男にモテキ到来――という起点からやがて転調し、後半はジャンル映画的な強度で話をぐいぐい引っ張っていく。
作風を喩えるなら、初期ヌーヴェル・ヴァーグ発、キャプラ経由で、着地した所はアキ・カウリスマキや山下敦弘のご近所みたいな。この先、長~く付き合える映画作家なことは疑いない!