谷川さん、詩をひとつ作ってください。 (2014):映画短評
谷川さん、詩をひとつ作ってください。 (2014)芸術にはまだやれることがあるのだ。
あの3.11を体験したあと、ほぼすべての表現に関わる者は思い悩んだはずだ。「この破滅的な災厄を前に、自分の表現などいったい何の役に立つのか」と。『自転車でいこう』で大阪生野の自閉症青年と周囲の人々を、自然体の可笑しさと親密さでポジティヴに描いたドキュメンタリスト杉本信昭は、大詩人・谷川俊太郎を描くに際し、彼自身の姿ではなく、彼の詩が持つ「力」こそを映像にしようと試みる。「あの日壊れなかった言葉はあるだろうか」と杉本が追うのは、谷川俊太郎とは無関係な日本各地の人々の生きる姿…。だがそこに詩人の言葉が声として、文字として重ねあわされたとき、ポジティヴな力が沸き起こってくるのだ。
この短評にはネタバレを含んでいます