Mommy/マミー (2014):映画短評
Mommy/マミー (2014)形式先行ではなく、エモーションにどこまでも忠実
ドランの処女作『マイ・マザー』のラストで使われたスタンダード画面をさらに狭め、正方形が全編の基本サイズとなる。1:1のスクエアフォーマットで、いま最も強く連想されるのはインスタグラムだろう。日常を切り取る感覚の更新。これは外界に対する「母と息子」の世界――激しい愛憎、密着と閉塞を生々しく伝える。
内容はドランの中心的な主題の延長だが、カスタマイズされた話法の“的確さ”に心底驚いた。例えば音楽。オアシスの「ワンダーウォール」なんてDJで言うと「これ掛けちゃう?」的な大ネタが、観る者の高揚を多層的に発生させる。エモーションから逆算して選び取られた形式。この明晰さは天才というより、秀才の絶頂だ。
この短評にはネタバレを含んでいます