美しき獣 (2012):映画短評
美しき獣 (2012)カサヴェテス愛娘の処女作は'70年代風の耽美系ホラー
故ジョン・カサヴェテスの長女である女流監督ザンの長編処女作は、まるで’70年代のジャン・ローランやハリー・クーメルを彷彿とさせる官能的な耽美系ヴァンパイア映画。
ストーリーは殆どあってないようなもの。ビクトリア王朝風の豪邸に身を寄せる美しき女吸血鬼とイケメン映画脚本家の愛欲関係を軸に、闇の世界に生きる者の漠然とした虚無感や哀しみが淡々と描かれる。自然光や人工照明を巧みに使い分けた映像のスタイリッシュな艶めかしさが魅力だ。
モリコーネやガスリーニを連想させる華麗な音楽スコアを含め、往年のヨーロピアン・ホラーへのオマージュが詰まった秀作。こういう映画を待っていた筆者としては素直に嬉しい。
この短評にはネタバレを含んでいます