エール! (2014):映画短評
エール! (2014)
ライター2人の平均評価: 4.5
これはマジで笑って泣けます!
フランスの田舎の女子高生が、両親の反対を押し切って歌の道を目指す。それ自体はよくある話だが、しかし本作の場合、彼女以外の家族全員が聾唖者。音楽の素晴らしさを彼らにどう理解してもらうのか、そして自分の支えが必要な家族と将来の夢のどちらを選ぶのか。そこが本作の焦点となる。
それにしても両親の自由奔放なこと!反骨精神が旺盛で喜怒哀楽が激しくてフリーセックス。初潮を迎えた娘に“ようやく女になった!”って狂喜乱舞する母親って(笑)。その強すぎる絆と愛情ゆえ、主人公は何事にも奥手になってしまう。そんな彼女の気持ちを代弁するかのような、ミシェル・サルドゥの名曲がまた感動的。クライマックスは大号泣です。
一見、異形だが、根っこは正しい家族のドラマ
聴覚障害のある家族の中で唯一、聞こえて話もできる女子高校生を主人公に据えた点が巧い。
音のない世界で生きる両親や弟の声となる役目をずっと担ってきたヒロインは、家庭内の義務感に縛られた窮屈なキャラ。一方で障害を持つとはいえ両親は言いたいことを言い、やりたいことをやっており、しがらみに縛られたヒロイン以上に伸び伸びとしており、ユーモアを宿している。健常者と障碍者の、そんな対比が面白くも興味深い。
子どもが大人へと成長するとともに、親もそれを受け入れて成長しなければいけない。そんな当たり前のことをさりげなく認識させる点でも、本作には意義がある。家族ドラマの良心作。