草原の実験 (2014):映画短評
草原の実験 (2014)そして半時間ばかり天に沈黙があった(『サクリファイス』より)
静謐で美的だが、これは同時に衝撃作だ。草原にぽつんと立つ樹木など、タルコフスキーの“遺産”を数々継承しつつ、もっと直截な風刺の力を装備している。
台詞なしの作風は、詩的リアリズムとでも言うべきか。無垢で美しい少女を中心に立たせた映画世界は、おとぎ話と苛烈な現実の暴力的な接続だ。それは穏やかでささやかな日常生活の周りに、実は狂った野獣のような現実や政治が蠢いているというイメージをもたらす。
我々の大切な日々が巨大なものに破壊される不安、とは常にこういう形をしているのではないか。だから本作は激しく胸を締めつける。『風が吹くとき』も『TOMORROW/明日』もそんな映画だった。
この短評にはネタバレを含んでいます