マジック・マイク XXL (2015):映画短評
マジック・マイク XXL (2015)ライター5人の平均評価: 3.4
野郎同士の旅のドラマに妙味アリ
前作以上に男性ストリップの見せ場を強調して女性の観客に媚びを売るだけだったらイヤだなあ……という不安は杞憂だった。むしろ、しっかり“野郎”の映画。
ドラマの核にあるのは友情。考え方の違いを明確にするケンカ、巨根が悩みの仲間へのからかいや思いやりなど、男同士だからこそ噴出する逸話にニヤリとさせられる。時にアホらしく、時にアツくなる、あの感じが伝わってくる、愛すべき旅物語だ。
とはいえ、決してストリップ描写が控えめになったワケではなく、会員制クラブでのダンスはかなりキワどい雰囲気。パフォーマンスのセクシーな雰囲気という点では前作を凌いでいると思う。
M・マコノヒー、マカオへ出稼ぎに行って正解!
1作目が当たったから続編を作るのは当然の流れだが、ここまで観客の声におもねって作られるとむしろ清々しい。文字通り裸一貫でアメリカンドリームを成し遂げようとする男の野望は縮小され、マッチョボディを武器に女性の欲望を満たすことに終始。C・テイタムの本格的ダンスを見たいという声は、まぁ、ほぼ無視だ。
監督は前作のS・ソダーバーグから、ソダーバーグ組の新人に交代。ショーの内容一つとっても前作は品とスタイリッシュさを保っていたが、今回はそこはかとない場末感が漂う。これぞ本場米国のストリップとも言えるだろう。
監督って大事…と改めて実感させられるに違いない。
男も女も肉食全開の筋肉祭り!
伝説の男性ストリッパー、マジック・マイクと仲間たちが、キャリア最後の晴れ舞台としてストリップ大会へ出場するべく旅に出るシリーズ第2弾。
基本は気ままなロードムービーだが、同時に裸一貫で稼いできた男たちの、若さの限界を意識した悲哀や将来への不安も滲む。相変わらずキレッキレのダンスを披露するチャニング・テイタムも格好良いが、前作では目立たなかった仲間たちが大きくクローズアップされるのも嬉しい。
そして、最後は男も女も肉食全開な狂乱のストリップ大会。以前に海外の女友達から、なぜ東京には男性ストリップがないの!?と驚かれたが、いや、農耕民族の日本人にこのノリは無理ですってば(笑)。
美ボディが商売道具な仕事に訪れる終焉を華やかに!
刹那的な生き方のまま30歳になった男性ストリッパーが本当にやりたいことに気づいてから3年、マイクのダンスは今までにも増して切れっ切れ! でも今回、肝となるのは彼と友人との関係性であり、それぞれの人生がかいま見える男性ストリッパーに自己投影する観客も少なくないだろう。体が資本の職業は先が見えるのが切ないが、人生の次のステージを目指す男たちが最後にでっかい花火を打ち上げようという気概がドラマをひっぱる展開はスポ根っぽくて見やすい。もちろん目玉は女性のハートをトロトロに溶かすセクシー・ダンス。Tバックで腰を振る男って冷静に考えたら変テコだけど、華やかな終焉には文句のつけようもない。
フロリダから東海岸へ、男たちの光と影
今回は男泣き度が高い! 女性奉仕の裏にあるマッチョイズムの黄昏。中年化し、厳しい現実や下り坂に直面したチーム男子の悲哀にグッときた。自信喪失気味のリッチーが、コンビニでバックストリート・ボーイズの“I Want It That Way”をBGMに一席披露するところは泣き笑いの名シーン!
ブロマンス色も強いこの映画の根っ子はニューシネマだろう。C・テイタムは前作を『サタデー・ナイト・フィーバー』、今作を『さらば冬のかもめ』に喩えているが、フロリダでの再会からの旅、との設定も含め筆者が連想したのは同地が到着点だった『真夜中のカーボーイ』。マイク達は男性性を武器に夢を求めたジョーの末裔にも見える。