ヴィオレット ある作家の肖像 (2013):映画短評
ヴィオレット ある作家の肖像 (2013)表現者の業を見据えた“「伝記」以上”の傑作
主演E・ドゥヴォスの磁力が凄まじい。付け鼻の役作りは『めぐりあう時間たち』でV・ウルフを演じたN・キッドマンを想い出すが、容姿にもコンプレックスを持ち、必死で愛を求める姿にジャニス・ジョプリンを連想。誰にも好かれない、本も売れないとブチ切れ、すぐ疎外感に襲われる一挙手一投足の総てから、「書く」事でしか救われない壮絶な魂の形がせり上がる。
ボーヴォワールとの関係は“仕事と恋愛”を巡るすれ違いを描いて生々しい。実存主義が華やかな頃の仏文壇の再現も見ものだが、作劇には当然ジェンダーの問題が強く意識されている。サルトルとカミュは姿を見せない。メインは性差を超えて先駆的に生きた人物に絞られているのだ。
この短評にはネタバレを含んでいます