ドリーム ホーム 99%を操る男たち (2014):映画短評
ドリーム ホーム 99%を操る男たち (2014)ライター3人の平均評価: 3
身の丈に合った家に住もうと思いました。
ローンが払えずに銀行が差し押さえた物件を買い取り、転売する。まっとうなビジネスだ。しかし、自宅を奪われた人間は恨み骨髄。物語の冒頭、生まれ育った家に固執する主人公デニスに不動産ブローカーが「不動産に感情移入するな」と忠告するが、持てる者の奢り? バブル崩壊で財産を失った庶民の哀切はもちろん、悪魔に魂を売っても家を取り返そうとする主人公デニスの葛藤が痛切に伝わってくる。A・ガーフィールドが悩める主人公を好演しているが、強烈な印象を残すのは悪役のM・シャノン。良心無き勝ち組ぶりがいっそ清々しい。ところで、本作を見て思ったのは住宅ローンは怖いということ。資産が無いなら身の丈に合った家に住むべし。
借金に対する日米の価値観の違いが分かるかも
ローン返済の滞納で自宅を奪われた平凡な父親が、大金を稼ぐため冷酷非情な不動産屋に雇われ、今度は自分が人々から家を奪っていく。米国の格差社会の理不尽を糾弾した作品だ。
とはいえ、おや?と思うのは主人公を含む“普通の人々”の金銭感覚と家への執着だ。日本人なら身の丈にあった暮らしをと手頃なアパートにでも移り住むところを、彼らは何ヶ月もローン返済を待った上で正式な手続きを踏んだ銀行や不動産業者を恨み、広くて快適な我が家にこだわる。中には明らかに無駄遣いしている人も。この違和感は借金や貯蓄、さらには個人の権利に対する日米の価値観の違いなのだろうが、どうにも弱者側に感情移入しづらいのが難点だ。
マイケル・シャノンが語るアメリカの真実に凍りつく
マイケル・シャノン演じる不動産業者が、アメリカとはどんな国なのかを語る瞬間、その鬼気迫る演技に圧倒される。そして、その台詞の的確さに凍りつく。
モチーフは、各映画賞で話題の「マネー・ショート 華麗なる大逆転」と同じ、2007年からの住宅ローン関連のアメリカの経済破綻。本作はその大きな動きの末端で、住宅を失う人々と、住居を差し押さえる不動産業者のドラマを描く。舞台は、住宅ローン破綻の最多地域のひとつ、フロリダ州。保養地のイメージもあるこの土地を、「THE ICEMAN 氷の処刑人」のボビー・ブコウスキーのカメラが、常に太陽に照らされ、起伏なくただ平坦に広がる乾いた世界として映し出す。