Maiko ふたたびの白鳥 (2015):映画短評
Maiko ふたたびの白鳥 (2015)ライター3人の平均評価: 3.3
あのノルウェーの日本人妻ですよ
「世界の日本人妻は見た‼︎」を見た人なら驚くだろう。豪快な西野麻衣子さんとのギャップに。いや、本作の苦難があったからこそ、あの笑顔に辿り着いた事を知るだろう。
キャリアの絶頂で迎えた出産という選択。
”女は強し”と言われるが、乗り越えるハードルの数が男性よりも圧倒的に多いのだから当たり前とさえ思ってしまう。
そして本作は、彼女の選択を当然のように受け入れるノルウェー社会をも写し出している。日本でも”育休”が取り沙汰されているが…、道のりは遠いな。
ちなみに西野さんが立つ国立オペラハウスは、映画『もしも建物が話せたら』にも登場。合わせて鑑賞すると、彼女の偉大さが一層実感出来るだろう。
父子鷹ならぬ母娘白鳥が極めた頂点はしなやかで美しい
ノルウェー国立バレエ団のプリンシパル、西野麻衣子が妊娠・出産を経てカムバックするまでを追うのだが、事前情報無しで見たので復帰できるか否かハラハラした。産後すぐに幼子の横で体作りを再開した西野を支える夫や仲間の態度、整った職場環境からは働く女性の支援が当然なノルウェー社会も垣間見える。うらやましい。でも、やはり感心するのは、西野を突き動かす「バレエ=人生」の哲学と彼女を作った母親のスパルタな愛情だ。留学中にホームシックで泣く娘を「帰ってくるな」と突き放した母親がいたから今の西野があるわけで、父子鷹ならぬ母娘白鳥。愛する家族に見守られて頂点を極める西野のしなやかで美しい踊りに圧倒された。
不可能を可能にしてきた日本人バレリーナの軌跡
ノルウェーの国立バレエ団でプリンシパルを務める日本人ダンサー、西野麻衣子の半生、そしてバレエと子育ての両立という困難に挑む現在の姿を追うドキュメンタリー。
言葉や人種の壁など様々な障害を乗り越え、不可能を可能にしてきた西野のチャレンジ精神と負けん気の強さは尊敬に値するし、そんな彼女の夢を全面的に支えてきた両親や理解ある夫との固い絆にも感銘を受ける。
ただ、日本のバラエティ番組で紹介された際には、バレエ界の熾烈なライバル競争や陰湿なイジメなどにも言及されていたが、本作ではそうしたダークサイドは殆ど触れられていない。全体的に踏み込みが浅いという印象だ。そのため、いまひとつ食い足りなさが残る。