スター・トレック BEYOND (2016):映画短評
スター・トレック BEYOND (2016)ライター3人の平均評価: 4
ドラマ的には食い足りないが、ペクタクルな見せ場は盛りだくさん
リブート版シリーズ3作目の今回は、監督がJ・J・エイブラムスから「ワイルドスピード」シリーズのジャスティン・リンへバトンタッチ。その違いは誰の目にも明らかだろう。オリジナルを大胆に換骨奪胎しつつも、人間ドラマやテーマに「スタトレ」らしさを継承していた過去2作に対し、本作は徹底して派手なアクションとスペクタクルに比重を置く。
旧シリーズへの目配せはあれども、個々のキャラ描写は結構アッサリ。物語にもあまり深みはない。スールーの同性婚生活とか、もうちょい掘り下げて欲しかったのだが、残念ながらほぼスルー(ダジャレか!)。ドラマ的な食い足りなさが惜しまれる。
キャラ重視ゆえの面白さ・アツさこそが魅力
『フォースの覚醒』に集中したJ.J.エイブラムスの降板は残念だったが、『ワイスピ』シリーズを蘇生させたジャスティン・リンが監督を務めるのであれば代役として不足ナシ。
エンタープライズ号のクルーを一度バラバラにして、それぞれの冒険を描くことは正解だったと思う。というのも、キャラクターのひとひひとりに愛情を注ぐリン監督らしさが活きるから。そのおかけで、彼らが再結集したクライマックスには確かなアツさが宿る。
これはSFシリーズ特有の“イチゲンさんお断り”的なイメージを払拭するうえでも効果的。チームの絆をストレートに謳った本作でシリーズを初めて経験する観客は、ある意味ラッキーかもしれない。
新たな宇宙大作戦が始まる!
どの登場人物も"いい表情"をする瞬間があり、それが画面に映し出される。共に行動するペアの組合せもいつもと違い、カークとチェコフ、スポックとボーンズ、スコッティとエイリアン美女が組んでそれぞれの個性が際立ち、そうそう、このキャラがこう言ったらこのキャラはこう返すよな、と思わせる納得の掛け合いぶりを堪能させてくれる。ギャグも大盛り。この辺の雰囲気は脚本に参加したSFオタク、サイモン・ペグの貢献度大。加えて魅力的なのは、大宇宙ならではの巨大空間。3Dの奥行き感を活かした、惑星サイズの巨大な空間が出現し、その空間中をカメラが縦横無尽に動き回る。前作のラストで宣言した通り、宇宙での大冒険の始まりだ。