花戦さ (2016):映画短評
花戦さ (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
超有名な史実を別角度から見る楽しみ
正直、また信長と秀吉か⁉︎
とも思ったが、花僧の視点から描くとは新鮮。
しかも千利休切腹の謎に新説を提示するのだから、歴史好きなら尚更、見逃せないだろう。
そこは原作と脚本の力によるものが大きいが、花が武将たちの心をも動かしたとする物語に、説得力を持たせるスタッフの仕事ぶりに感服。
池坊が全面協力した立花の迫力と荘厳さは言わずもがな、その花を引き立て、歴史の息吹をも感じさせてくれるような重厚なセットと美術は京都・太秦ならでは。
気づけばベテラン俳優陣の演技を含め、当たり前のように安心して見られる時代劇は久々かも。
たかが娯楽。
だが心から楽しめるのは、裏打ちされた伝統と技術あってこそなのだ。
言いたいことの言えない世の中にはなって欲しくない
極端な被害妄想のせいで、自分に意見する周囲の人間ばかりか、たわいもない陰口を叩いただけの庶民にまで粛清の手を広げる豊臣秀吉。いつの世も権力者は孤独だというが、犠牲になる方はたまったもんじゃない。そんな恐怖政治を敷く暴君に正気を取り戻させるべく、武器ではなく生け花で戦いを挑んだ華道家を描く戦国時代劇だ。
基本的にはほのぼのとした人情喜劇。しかし粛清が始まってからの展開は容赦なく残酷でシビアだ。この極端な明と暗のコントラストに若干戸惑うものの、しかしこれが主人公を秀吉との対峙へ駆り立てる原動力となる。言いたいことの言えない世の中にはなって欲しくない。そんな願いの込められた作品とも言えよう。