マグニフィセント・セブン (2016):映画短評
マグニフィセント・セブン (2016)ライター5人の平均評価: 3
むしろ原典の普遍性に気付かされる最新リメイク
オリジナル版『荒野の七人』は言うに及ばず、これまで世界中で数えきれないほどリメイクされ、パクられてきた『七人の侍』のストーリーを、鬼才アントン・フークアがどう料理するのか興味津々だっただけに、あまりの直球ぶりに違った意味で驚いた。基本プロットはストレートな焼き直しだ。
人種の多様性を重視したキャラ設定など、僅かな変更によってトランプ時代の米国社会に対する警鐘が垣間見える点は面白い。それだけ原典が普遍的なのだ。とはいえ、アクションに比重を置きすぎてドラマが希薄になってしまった感は否めず、予想通りの展開がサクサクと進んでいくため、クライマックスへ向けての盛り上がりもいまひとつ。全体的に惜しい。
多種多様なガンマンを率いるリーダーの動機は崇高とはいえない
痛快な銃撃戦で目を楽しませてくれる名作リメイクにしてウエスタンの再生だが、物語は今を映す鏡だ。独裁から村を救済するよう、黒人ガンマンに依頼するのは女性。原点に囚われすぎず、役者の個性を生かし「7人」の人種は多種多様。菊千代に当たる両義的な存在はなく、ガンマンと村人のドラマは希薄だが、ポイントは主人公が身を投じる動機だ。勘兵衛の「この飯おろそかには食わんぞ」に当たる大義名分なきままの参戦。理由が語られるとき、往年のジャンルの殻を被った、現代的な“負の連鎖”の物語であることが明らかになる。その動機は決してマグニフィセント(崇高)とは言えない。生き残るガンマンたちの人種はアイロニーに満ちているが。
アクションヒーローものとしてはアリ、でもカタルシスが足らん
『七人の侍』も『荒野の七人』も傑作なので、リメイクしなくてもいいのではと思うが、西部劇を現代風に焼き直して若い観客に見てもらえる意義は認めたい。フークワ組のデンゼルやイーサンはいい仕事しているし、ハリウッド俳優に負けないオーラを発するビョンホンも魅力たっぷり。ただしキャラ設定の変更と旧作にあった村人との交流はじめとする人間ドラマをカットしたので、7人の目的が“弱きを助け、強気をくじく”に見えないのが惜しい。期待していたカタルシスが得られない!? ただしガン・アクションや戦いぶりはすごく派手になっているので、アクションヒーローものとしては楽しめる。
温かい目で見るのがベスト!
どう作ったって、『荒野の七人』の足元に及ばないにしろ、そこは毎度何かしら爪痕を残すアントワーン・フークア監督。盟友デンゼル・ワシントンと、『トレーニング・デイ』好きはニンマリあり、クリス・プラットなどのキャラ押し、ドンパチ・メインという、どこかで『許されざる者』も頭の中にありながら、ターゲットを西部劇初心者に向けている。133分と、オリジナル+5分の尺も現代風だが、西部劇特有の空気感を醸し出すうえ、ある程度のキャラ説明にはしょうがないこと。オリジナルに思い入れがあるほど驚愕なオチなど、謎な部分もいくつか見られるが、遺作となったジェームズ・ホーナーのスコアが身に沁み、それどころではない。
7人と監督、それぞれの個性と得意技が炸裂!
なにしろ、主要登場人物が7人もいる。さらにそれを演じるのが、デンゼル・ワシントン、クリス・プラットら当世の人気俳優たち。そのそれぞれに魅力的かつ判別しやすい性格を与え、さらに各自にその個性と結びついた得意な武器を持たせる。そのうえで、アクションシーン中に、7人それぞれの個性を際立たせる見せ場を作る。それだけでも至難の技だが、本作はそれを目指してしっかり実現している。そして、クライマックスの銃撃戦の弾丸一つ一つの重さを感じさせる演出は、アントワン・フークワ監督の見せ場。
映画全体を通して画面中の空がどんどん青さと広さを増していき、最後に「荒野の七人」の主題歌が鳴り響く。