海は燃えている ~イタリア最南端の小さな島~ (2016):映画短評
海は燃えている ~イタリア最南端の小さな島~ (2016)ライター2人の平均評価: 4
想像をかきたてるドキュメンタリー
交互に映し出される難民救助劇と少年の日常。
同じ島に、全く異なる世界が存在しているようだ。
島民は難民問題に無関心なのか?
それとも、年間5万人以上の難民・移民が辿り着く島だけに麻痺しているのか?
だが同島は我々が難民問題に関心を寄せる遥か前から、命がけで海を渡ってきた人を受け入れてきた。
救出を手伝った人もいるだろう。
そこに難民収容センターが出来、取材も来るようになった。
ようやく!という多少の安堵を味わっているかもしれない。
こうして本作を見ながら、島民の心情を想像せずにはいられない。
遠い国の出来事を、他人事と思わせない巧妙な構成と映像の力。
本作が高く評価される所以がそこにある。
「壁」で世界は解決しない。
地中海に浮かぶ小さな島へ、過酷な旅を経てやってくるアフリカ・中東からの難民。一方、淡々と日々の日常を生きる島民。これは現在、最も端的な、そしてどこかの大国が蓋をしようとしている「世界の縮図」ではないか。監督は『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のG・ロージだが、前作の“都市と群像”をめぐる定番的な答えからの逆算臭さが、今回はない。
余計な説明や情報を盛らないドキュメンタリーだが、現実の多層性から“物語”を抽出するスタイルは巧緻。映像は審美性も高い。しかしポエジーが決して写実の精度を曇らせない。この見極めが凄い。ネオリアリズモの流儀が根付いている“イタリア映画”の傑作だ。