kapiw(カピウ)とapappo(アパッポ)~アイヌの姉妹の物語~ (2016):映画短評
kapiw(カピウ)とapappo(アパッポ)~アイヌの姉妹の物語~ (2016)「唄」は「問題」を超える。
良い意味で「問題」が前面化しない。こちらの頭でっかちな構えの態度を溶かされていくような鑑賞体験だった。
主人公はアイヌ民族の唄を継承する歌手の姉妹――姉は東京・高尾に、妹は地元の北海道・阿寒湖に暮らす魅力的な女性で、共に子供三人の母親でもある。時期は2011年。震災を挟んで、ひたすら「現在」を生きる姉妹と周りの人々に密着した(時にかなり赤裸々な)日常生活の記録だ。
全く等身大のプライベートな風景なのだが、その中で自らのルーツをどう意識するかの葛藤だけが大きく加わる。そして結局は「歌うこと」の肉体性がこんがらがった自意識を超えていく。感動。「唄」という文化形式の強さを改めて感じ入った好篇。
この短評にはネタバレを含んでいます