ホワイト・バレット (2016):映画短評
ホワイト・バレット (2016)ライター2人の平均評価: 5
メイキングを観れば、リピートしたくなるなる。
原題『三人行』通り、「論語」がベースになってるが、別に説教臭いわけでもなく、『ブレイキング・ニュース』以上の実験映画だが、しっかりエンタメ。同じ舞台劇風設定でも、戯曲だった前作『香港、華麗なるオフィス・ライフ』の失敗を踏まえ、病院内に絞ったことで、ジョニー・トーらしさ全開。ラム・シューも、ロー・ホイパンも登場から笑わせるなど、ファンサービスも忘れません。そして、一見何も考えず撮ってるようで、しっかり考えてるトーさん演出。縦横無尽にハイスピード・カメラが舞うクライマックスなど、メイキングを観ると、リピートしたくなること請け合い! 『ポチョムキン』だけでなく、若干『絶体×絶命』入ってるのもご愛嬌。
「私は映画だ」とは、いまジョニー・トーの言葉かもしれない
明らかに傑作、とんでもない悦楽の88分! 全てが病院の中だけで展開される異色作にして、完璧なジョニー・トー節が濃縮。とにかく空間設計が凄すぎて悶絶。9mm銃弾を頭に受けたインテリやくざ、刑事、外科医の美女など、登場人物達は共にゲームを成功させるための“プレイヤー”。選手は各人考え抜かれた配置につき、鉄壁のフォーメーションが組まれる。
医療ドラマ(雰囲気は大映、増村っぽい)からノワールへとジャンル的にも手品のように変化。ワン・シチュエーション物というとむしろ舞台劇のイメージだが、とことん映画的に純化された“サスペンス&アクション”が炸裂。ちっちゃい「オデッサの階段」など愛敬もたっぷりだ。