グレートウォール (2016):映画短評
グレートウォール (2016)ライター5人の平均評価: 2.4
大スクリーンで観ないと意味がない、異形の怪獣軍団襲撃映画
マット・デイモンが何故か『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を蹴って主演した中国歴史大作は、レジェンダリー産怪獣映画だ。万里の長城は、『ワールド・ウォー Z』的に群れを成して襲撃してくる中国神話の凶悪な怪獣を撃退するために築かれたという設定に腰を抜かして以降、物語は膨らまず、ただ西洋人が中国軍と共闘するだけ。二転三転した難産プロジェクトは、時としてこうした異形を生む。ヌンチャク型のバチでマッドマックスばりに太鼓を叩きながら臨み、色鮮やかな甲冑に身を包みダイブして戦う美少女戦士という戦国絵巻に、微かにチャン・イーモウの刻印が。大スクリーンで観ないと意味がない、憎みきれないろくでなしである。
偏愛作『キング・オブ・エジプト』に通じる愉快な珍作
アカデミー賞授賞式でジミー・キンメルから“チャイニーズ・ポニーテール映画”とディスられた通り、チャン・イーモウ監督のハリウッド進出作は、制作費を潤沢に使った超絶とんでも映画だ。美女揃いの槍部隊はじめとする万里の長城防衛軍団はゲームの萌えキャラみたいだし、謎の怪物もいい感じでグロくて凶暴。超合金ゴッドが戦う『キング・オブ・エジプト』に通じる珍作だ。マット・デイモンを主役に据えるも、観客の共感を呼ぶ見せ場があるのは韓流アイドルのルハンや大御所アンディ・ラウ! 欧米におもねらず、中国マーケット受けを追求する監督の姿勢に脱帽。トンネルは無敵じゃないという教訓もあるので、トランプ大統領に見せたい。
歴史大作?実はレジェンダリーのモンスター映画!
これは「GODZILLA ゴジラ」「キングコング:髑髏島の巨神」のレジェンダリー・ピクチャーズによるもう一つのモンスター映画。今回のモンスターは、数が勝負。サイズは巨大ではないが、その数は無数。膨大な数のモンスターが大集団となって襲来する。チャン・イーモウ監督、マット・デイモン主演、モチーフは万里の長城ときて格調高い歴史映画なのかと思いきや、実はモンスター集団VS人間集団の戦闘バトルを描くアクション・アドベンチャーなのだ。
注目なのは「ロード・オブ・ザ・リング」のWETAワークショップによる甲冑や武具類。実際の古代遺物を踏まえて作り込まれた美麗な小道具が、画面の細部を彩っている。
オールスター・ムダ遣い大会!
オタク心をくすぐる怪獣映画を連発し、中国市場で暴走するレジェンダリー・ピクチャーズだが、『ウォークラフト』に続いてやっちまったことで、CEOのクビも飛んだトンデモ超大作。「進撃の巨人」「テラフォーマーズ」に、ちょいと「沈黙」も加えてみたものの、ヌンチャク太鼓の轟音が鳴り響くオールスター・ムダ遣い大会に! チャン・イーモウ監督も雇われ感満載で、何のカタルシスも感じさせない演出のうえ、持ち味である性悪感も皆無。当初のエドワード・ズウィックのままだったら、もうちょいマシだったのでは?と思うが、“レジェンダリーの姫”ことジン・ティエンとルハンだけは、アニメ・キャラぽい役割を果たしたので、★おまけ。
チャン・イーモウ監督のトンデモ映画としては必見
率直な感想は、チャン・イーモウ、どうしちまった!?といったところか。万里の長城を舞台にした『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』もどきの怪獣系歴史アクション・ファンタジー。中国資本が入っていることもあってか、国策映画的な匂いもプンプンとする。
古代中国がいかに偉大な先進国だったのかを印象付けたいのは分かるが、それにしても時代考証などどこへやらの美化し過ぎた描写の数々は噴飯物。ファンタジーを免罪符にしようったってそうは問屋が卸しませんぜ。
『スペース・インベーダー』のカバエイリアンみたいなモンスターの造形も微妙。東西の相互理解と協調を謳ったストーリーは、中国共産党への目くばせにも思える。