ラビング 愛という名前のふたり (2016):映画短評
ラビング 愛という名前のふたり (2016)ライター2人の平均評価: 4
こんな白人男の「男気」もある
最良の新古典派、ジェフ・ニコルズ監督の語りは本当に味わい深い。終末系スリラーの『テイク・シェルター』にしろ、マーク・トウェイン的な少年の冒険譚『MUD』にしろ、アメリカ映画の定型をありふれた普通の人々、市井の視座から捉え直し、極めて繊細な肌触りを見せる。法廷劇に展開する今回も然り。
実話を基にした、ある種のロミオとジュリエット。ブルーカラー男の純情を体現するジョエル・エドガートンの佇まい、特に「顔」が素晴らしい。彼は保守的な地域で生まれ育ったノンポリの白人男なのだが、ごく自然に恋をし、人種融和の道に踏み出す。ここは逆偏見的なリベラルの図式からはみ出す、とても重要なポイントだと思う。
ただ純粋に夫婦でいたかった男女のラブストーリー
公民権運動がまだ産声をあげたばかりの時代、異人種間の結婚を禁じた州法によって幾度も理不尽な目に遭いつつ、やがて国を動かすまでに至った実在の夫婦の深い愛情と固い絆を描く。
世界中で差別と不寛容の蔓延する今だからこそ語られるべき物語ではあるが、しかし決して声高にメッセージを叫ぶことなく、過剰にドラマティックな演出を施すこともなく、主人公夫婦を必要以上に英雄視することもなく、ただ純粋に夫婦でいたかった男女のラブストーリーとして仕上げているところが好感を持てる。
不器用で寡黙なジョエル・エドガートン、奥ゆかしさの中に情熱を秘めたルース・ネッガ、どちらも文句なしの好演。じわじわと心に滲みる映画だ。