打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (2017):映画短評
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? (2017)ライター2人の平均評価: 3
夢幻鉄道のループ…ひと夏の冒険と儚い恋の記憶は希薄になった
猫を消し去り、隕石落下をリセットする、川村元気P「もしも三部作」の趣も匂うが、企画性はキャッチーだ。だが、実写のアニメ変換は滑らかに運ばない。広瀬すずの物憂げな声を得てエロスは増したが、小学生の駆け落ちと花火の形状確認の旅を中学生に換えたことで、無邪気さや危うさは失われた。ギミックの設定でリープはロジカルに、作画によって夢幻は煌びやかになったものの、このジュブナイルにとって蛇足感は否めない。妄想充足度が高まった分、切実な願望は希薄になり、観客が拡げるイマジネーションの余地は狭められた。原作者と影響下の脚本家を招かず、物語性に縛られることのない、シャフトによる換骨奪胎Ver.を観てみたかった。
26年経っても衰えぬ、観月ありさ人気!
細田守監督の『時をかける少女』に見習い、若い世代に向け、名作をアニメでリブートする、いかにも川村元気案件。細田版『時かけ』の成功は、ヒロインのキャラなど、基本設定を大胆に変更した点だったが、今回は尾道を思わせる坂の町を舞台に、小学生を中学生に変えた程度。オリジナルの持つ危うさが消えるなか、名セリフやシーンが再現される。石井苗子(さげまん)が演じた母親の鬼の形相がなく、不安を覚えるなか、タイムリープ色強めのイマドキ展開に突入。プールじゃない、まさかのクライマックスなど、オリジナルのメイキング「少年たちは花火を横から見たかった」の裏話を踏まえた“補完”という意欲は買いたいが、観客には不親切すぎる。