人生タクシー (2015):映画短評
人生タクシー (2015)ライター2人の平均評価: 4
抑圧の中でも逞しく生きるイラン庶民の姿を温かく見つめる
イラン政府から20年間の映画製作禁止を言い渡されながらも、当局の目を盗んで作品を発表し続けるジャファル・パナヒ監督の最新作は、彼の人柄が伝わる温かくもユーモラスな作品だ。
パナヒ監督自身がタクシーを運転してテヘランの町を走る。乗客は海賊版DVD業者に路上強盗犯、人権活動家に迷信深い老女などなど。彼らと監督の微笑ましいやり取りを通じて、政治的・宗教的・伝統的な抑圧の中でも逞しく生きる庶民の姿が浮かび上がる。セミドキュメンタリー的な演出も非常に巧い。
今年のオスカーではイラン映画『セールスマン』が様々な話題を提供したが、パナヒ監督のような虐げられた映像作家の存在も忘れてはならないだろう。
「映画を作っちゃダメな俺」の大作戦!
言わば『これは映画ではない』の続編か。イラン政府により“20年の映画製作禁止令”を法的に喰らったジャファル・パナヒ――この著名な“元”映画監督がタクシー運転手となってテヘランの街に出る。それだけで車内はシチュエーション・コメディ、あるいは鋭利な風刺劇の舞台に!
タクシーの中は人間群像だと教えてくれたのはジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』だったが、パナヒの場合は錬金術のようなドキュメンタリズムを利かせて「社会の縮図」を展開する。極めつけの乗客はえらく聡明なパナヒの姪の少女。小さなカメラと冴えた知恵、タフな勇気さえあれば映画は撮れる。またパナヒの映画を観ることができて嬉しい!