パーソナル・ショッパー (2016):映画短評
パーソナル・ショッパー (2016)ライター3人の平均評価: 3
“笑わない女”クリスティンの冷たい美しさに酔う
セレブの買い物係という仕事に目を付けた点は面白いし、謎の人物からのメールが引き起こすミステリーや霊媒的なオカルトの要素にも興味を引かれる。しかし、それらを噛み合わせるドラマ的な整合性は期待しない方が吉。
アサイヤス作品は往々にして考えることを要求するが、本作も同様。噛み合わせていない部分は観客ひとりひとりが自身の想像で繋ぐしかない。そこに面白さを感じられるかが評価の分かれ目となるだろう。
ビジュアルは計算されていて美しく、ヒンヤリとした陰影の濃い映像に魅せられる。何より、ほとんど笑顔のないヒロイン、クリスティン・スチュアートの冷たい美しさがいい。劇中のセレブよりも美人過ぎ!?
ミステリーやオカルトの要素を兼ね備えたダークな心理劇
忙しい富裕層の代わりに洋服や宝飾品の買い物を請け負うパーソナル・ショッパーとしてパリに住むアメリカ人女性が、その一方で霊能者として亡き双子の兄からの“サイン”を待ち焦がれる。そんな彼女が謎の携帯メッセージによって殺人事件へと巻き込まれていくことになる。
ミステリーとオカルトを混ぜ合わせたようなプロットだが、しかし仕上がりはそのどちらでもないという印象。深い喪失感を抱えた孤独な女性が他者との繋がりを求め、やがて自己の内面を解放していくというダークな心理劇だ。ファッショナブルでスタイリッシュな映像は魅力だが、抽象的なストーリーは少なからず好き嫌いが分かれるだろう。
精神世界と物質的世界がぶつかりあうミステリー映画
「トワイライト」シリーズで 大スターになったクリステン・スチュワートが大物女優のパーソナル・アシスタントを演じるという「アクトレス〜女たちの舞台〜」のキャスティングは、おもしろかった。2年後に、またオリヴィエ・アサイヤス監督の映画に出たかと思ったら、 今度はセレブのパーソナル・ショッパー役。そこにもはや新鮮さがないのは否定できないが、今回のストーリーには、霊の要素が絡んでくるのが違い。 霊感が強い主人公モウリーンの携帯に送られてくる次々のメッセージ。送り主は誰なのか?果たして生きた人物なのか?精神世界と物質的世界を同時に描くコンセプトに独自性があるだけに、突っ込みきれていないのが惜しい。