ADVERTISEMENT

火花 (2017):映画短評

火花 (2017)

2017年11月23日公開 120分

火花
(C) 2017「火花」製作委員会

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

清水 節

桐谷健太と菅田将暉の掛け合いは笑いへの憧憬と敬意に満ちている

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 劇的な展開はなく成功譚でもないが、芥川賞の映画化にしてはモチーフが漫才だけに大衆性も兼ね備えている。不安と孤独に苛まれくすぶり続ける狂った十年を、一気に見せ切る力がある。映画であることを志向したNetflixのTVシリーズ版に対し、映画版にはTV的な感性が宿っている。最も体現するのが、桐谷健太と菅田将暉の日常の掛け合い。大阪弁による小気味よいテンポは神懸かり的で、笑いへの憧憬と敬意に満ちている。原作にない画でキャラクターの内面を表す術を板尾創路監督は心得えており、ライブ場面のテンションは尋常じゃないが、青春劇としては淡泊。主題歌を提供したビートたけしが監督していたならば…と夢想した。

この短評にはネタバレを含んでいます
天本 伸一郎

職人的な演出ながら、芸人のリアルさは板尾創路ならでは

天本 伸一郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

いわずとしれた又吉直樹による芥川賞受賞作の映画化で、それぞれ別のコンビを組む二人の若手漫才師の約10年に及ぶ交流を描く。Netflixのドラマ版では全10話で原作の余白を埋めて膨らませていたのを、今回の映画版では原作を削ぎ落して密度をあげており、時間経過に関しては映画版では伝わりにくいところもあるものの、双方ともに成功していると思う。独特の世界観を持つ板尾創路らしさは影を潜め、職人的な演出に徹しているが、今回はリアルな芸人を描くという点で、らしさが活かされていた(太鼓のお兄さんと馬のシーンも板尾らしかったが)。また、クライマックスの菅田将暉がコンビを組むスパークスの漫才は感動必至!

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

役者は素晴らしい、映画の仕上がりは…。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「映画版」として、菅田将暉と桐谷健太のキャスティングが完璧なのはもちろん、クライマックスの「スパークス」の漫才シーンも文句なしに素晴らしい! キーワードとなる熱海や吉祥寺の情景も印象的だ。とはいえ、「Netflix版」の職人監督群に比べ、板尾創路監督の演出はクールすぎて、胸に訴えかけてこない。しかも、「神谷が徳永のどこに惹かれ、どう影響されたか?」があまりに描かれていないこともあり、逆の状況になったときの衝撃は皆無。そのため、今後あまり語られないであろう芸人残酷物語『ボクたちの交換日記』に及ばない仕上がりに。ちなみに、どちらも木村文乃が出演しているが、そんなに芸人のカノジョ顔なのか?

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

とびきり優しい青春の歌

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

かねてより板尾監督が映画化を希望していた大喜利青春マンガ『キッドアイラック!』(長田悠幸)を、NHK Eテレの『SWITCHインタビュー』(昨年6月)で菅田将暉にそっと渡していた……のが前フリ。硬質の原作小説、やたら「映画的」だったドラマ版に対し、この映画版はゴツゴツと愚直さに徹した温かい人柄の『火花』だ。

自作自演による板尾監督の前二作が特異な作家映画だとすれば、その異才が「普通に」心をこめて歌ったフォーキーな味わい。『帰ってきたドラえもん』ばりに「逆のことを言う」漫才は名シーンに。めっちゃ可愛いヤンキーのお姉さん仕様の木村文乃、芸人と俳優の境界をハナから消している三浦誠己など脇も抜群。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

今年の主演男優賞、総合成績では菅田将暉に差し上げたい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

Netflix版の林遣都は、本人と役の離れたイメージを近づける過程に感心したが、今回の菅田将暉は見るからにハマリ役。両者の役へのアプローチの違いを比べると面白いかも。そして菅田将暉、スクリーンに現れた瞬間から完全に役として“生きている”ことに驚く。『帝一の國』『あゝ、荒野』とハイレベル演技のキープ力には恐れ入るばかり。
板尾監督は得意分野でも、やり過ぎな演出は極力、回避。もうちょっと観たい「寸止め」シーンも多用しつつ、キーポイントはじっくり演出する。じつに誠実な仕上がり。その誠実さに物足りなさも感じなくはないが、ホロ苦さと切なさが混在した青春映画の佳作をめざし、その目標は達成された。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT