甘き人生 (2016):映画短評
甘き人生 (2016)亡き母を想う哀切が古き良き時代への郷愁を誘う
イタリアのベテラン巨匠マルコ・ベロッキオの最新作。幼くして最愛の母親を失った男性の深い喪失感を、’60年代の幼少期と’90年代の現在を交錯させながら浮き彫りにする。
と同時に、これは高度経済成長期の’60年代と財政赤字やEU統合に揺れる’90年代を対比することで、その間にイタリア社会が失ったものを模索する話でもある。原題の「甘い夢」が意味するのは、母親の愛情でありかつて庶民が抱いた希望でもあるのだ。
全編に流れるドメニコ・モドゥーニョやジャンニ・モランディの懐メロ・カンツォーネ、情熱的に歌い踊るラファエラ・カッラのテレビ映像が、古き良き時代への郷愁を駆り立てる。切なくもほろ苦い映画だ。
この短評にはネタバレを含んでいます