ぼくらの亡命 (2017):映画短評
ぼくらの亡命 (2017)「ぼくら」は「いま、ここ」に留まり続けるしかない。
ます特濃の主人公像が凄い。いわゆるキモメンのホームレスで、恐ろしい呪詛の文字でテントを覆う孤独な青年。彼の本質を一言でいうと、実は「ロマンティスト」ではないか。理想・夢想過剰ゆえに世俗とのノイズも強烈になる。そんな彼が恋愛を通してシビアな現実社会と対峙するのが本筋になる。
彼の言う「亡命」とは何か。「此処ではない何処か」に逃げる事だ。それが社会的スペック皆無の男の妄言だと相手の女性はよく知っている。青年の焦燥と同期する後半の不穏な映像設計とサウンドスケープは圧巻! 『獣』二作の延長に当たる内田伸輝監督作だが、今回は社会のボトムを冷徹に見据え、格差や階級性の問題にも届く視野を備えていると思う。
この短評にはネタバレを含んでいます