パディントン2 (2017):映画短評
パディントン2 (2017)ライター4人の平均評価: 4.5
英国コメディー、絶好調!
『キングスマン:ゴールデン・サークル』同様、英国伝統のアイロニーと風刺が冴え渡るブラックコメディーだ。
世界中で排他主義が広まる中、異国から来たクマが人々の凝り固まった頭と心をほぐして、共生することの豊かさを提示する。
それを笑いと愛らしいビジュアルで包んで、全く説教臭さを与えずに。
中でもパディントンが飛び出す絵本の中を旅するシーンは驚きに満ちていて、大人ですら感嘆の声をあげてしまいそうなくらいだ。
圧巻はラスト。
暴走する列車は全ての小ネタや伏線を回収しつつ大円団へと突き進む。もう、お見事!と言うしかない。
相当練ったであろう脚本しかり、人を楽しませる為の、プロ中のプロの仕事ぶりに涙した。
ロイド・ダブラーに続く、理想の恋人は熊でした!
理想の男性は『セイ・エニシング』のロイド・ダブラーでしたが、パディントンも加わりました。どんな人にも分け隔てなく接し、敬意を持って、相手の良い面を見る。パディントンのような人ばかりだったら、世界がハッピーな場所になるはず。彼の温かなハートはご近所さんの優しさを引き出し、ムショ仲間とも固い絆を培う。その一挙一動に思わずにっこり。そして今回のパディントンはアクティブなアクション演技も披露。野良犬の背に乗って西部劇ばりの追跡劇をしたり、りんご飴を使って疾走する列車にしがみついたり。可愛くてかっこいい! 悪役を演じるヒュー・グラントのコメディ演技も素晴らしく、今後はこの路線を追求してほしい。
もっとブラウン一家、ファイヤー!
相変らず「Mr.ビーン」並に厄介キャラなクマ野郎だが、敵役がニコール・キッドマンからヒュー様に変わろうが、ポール・キング監督は続投なので、あのスラップスティックなノリは絶好調! いきなり刑務所の流れは、『怪盗グルーのミニオン大脱走』と思いきりカブるものの、最凶囚人役のブレンダン・グリーソンの怪演もあって、こちらの方が断然笑える仕上がりに。あまりに痛快すぎるクライマックスの列車アクションに、“水中で魅せる”サリー・ホーキンス! 前作の裏テーマでもあった移民問題を経て、ガッツリつかんだ家族の絆だからこそ成せる、野原一家、ファイヤー!ならぬ、“ブラウン一家、ファイヤー!”なノリも評価したいところだ。
ロンドンが英国製おもちゃ箱になる
何しろ冒頭に登場する重要アイテムが、飛び出す絵本。さらに、アンティークの店。移動式カーニバル。古典演劇の舞台衣装。悪役は英国男優ヒュー・グラント。そして、ご近所の偏屈な老人と、もう出てくるアイテムがすべて、英国ファン、玩具ファンの嗜好品ばかり。英国好き、玩具好き、作り物好きを感涙させた前作の魅力はそのままに、今回はさらに世界を英国製玩具化するパワーが増大。前作ではパディントンの住む家と前の通りがおもちゃ化したが、今回はロンドン中がおもちゃ箱になる。そのパワーは街に止まらず、パディントンが入ると刑務所までがオモチャ化していき、囚人たちも踊り出す。カラフルな色彩の英国製玩具箱にウットリ。