ゴッホ 最期の手紙 (2017):映画短評
ゴッホ 最期の手紙 (2017)ライター2人の平均評価: 2.5
やはり映画はストーリーだと再認識する
冒頭からしばらく、ゴッホの名画が怪しい動きを伴い、生命が宿ったかのようにスクリーンを支配する感覚に、心のざわめきが止まらない。しかし数十分が過ぎると、特に変化のない映像表現に飽きてしまった。その段階で何が必要かといえば、ストーリーの面白さだが、ゴッホの死の真相に迫るミステリーが、どうにもまどろっこしく、うごめく名画で船酔いのような感覚に陥り、なかなか作品に集中できなかった。
似た手法のリチャード・リンクレイターの『ウェイキング・ライフ』は物語も現実と幻想の狭間だったから、酩酊できたのだが……。もう少し短くまとめても良かった気が。もちろんゴッホのファンには、この斬新なアプローチ、必見です。
ゴッホの絵画が動きだし、彼の晩年に新たな光をあてる
ゴッホの絵画が動きだす。それだけで目を奪われる。映画はこの技法でゴッホの晩年を描くのだが、それだけではないさまざまな仕掛けに満ちている。
映像は、ふとした風景にも、気づくと彼が絵画で描いた光景が用いられている。登場人物たちもゴッホが残した人物画の姿で登場し、それでいて、演じている俳優が誰なのかが分かるような形で描かれている。
そうした映像技法が強烈すぎてそれに意識を取られてしまうが、この映画の主眼は、この技法を使いながら、ゴッホの死についての新たな解釈を提示して、彼の晩年に別の光をあてることにある。そこに実際にゴッホが残した手紙が、効果的に使われている。