妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII (2018):映画短評
妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
家父長制に縛られた人たちを軽やかに斬る
世相を巧みに盛り込み家族の悲喜こもごもを描くシリーズ。
今回は平田家の家事を担っていた長男の嫁の家出だ。
だが”逃げ恥”のような、専業主婦の労働対価を主張するのとは違う。
夫が嫁に放つ「俺が働いている時にお前は〜」というさもありなんなセリフ。
嫁よりも、逃げられた息子が「かわいそう」と嘆く姑。
露わにするのは古き家父長制が残る家庭だ。
それは熟年世代の観客に「胸に手を当ててごらん」と諭しているかのよう。
そしてその層とは、セクハラなどで世間を賑わせている時の人と重なる。
染み付いた彼らの意識を変えるには相当時間が必要で、男女平等な社会も、平田家の安泰もまた遠し……と考えさせられるのであった。
平成の終わりになって、ようやく「昭和」の男女観が終わる?
働き方改革のせいだろうか、保育園に息子を送っていく時に会うパパの数が随分増えた(数年前とえらい違いですよ!)。そんな生活の現場感覚からすると、本作の「専業主婦の倦怠」や「パートに出る出ない」といった問題の立て方は、いかにも『サザエさん』的な呑気さに思える。とはいえこの意識には世代差があり、全体のギャップを埋めていく作業は必要なのだろう。
西村まさ彦扮する幸之助は、おそらく「昭和」の亭主関白、男性優位の最後のシンボルではないか。日本を代表するベテラン巨匠監督が、ついにその息の根を止めた、とは言えるかも。そこから『マディソン郡の橋』を彷彿とさせるラブストーリーに転調する語りの巧みさは流石。