女の一生 (2016):映画短評
女の一生 (2016)自然主義文学の精神までもフィルムに焼き付けた傑作
過去にも幾度となく映画化されてきた文豪モーパッサンの『女の一生』。しかし、これはかなりの異色作だ。さながら8ミリフィルムで撮影されたような映像は、ドキュメンタリー風というよりもほぼホームビデオである。人工照明など使わず、セットや衣装も一切美化せず、カメラも演技も即興性を重視。まるで18世紀のフランスにタイムスリップしたかのようなリアリズムで、ヒロインの苦難に満ちた半生が克明に記録されてくのだ。
ただ単に原作のストーリーを再現するだけでなく、自然主義文学の精神そのものまでフィルムに焼き付けることによって、時を超えた人間の普遍的な生の営みが鮮やかに浮かび上がる。これぞまさに究極の文芸映画だ。
この短評にはネタバレを含んでいます