ダンガル きっと、つよくなる (2016):映画短評
ダンガル きっと、つよくなる (2016)ライター2人の平均評価: 4
父親のスパルタ特訓は愛の証だった!
以前、インド人男性から「幼い時は父親に、結婚後は夫に、そして老いては子に従う」と言われて仰天した。女性は自立できないの? 自分の夢を託した娘にレスリングの猛特訓をする父親マハヴィルも当初は、頑固オヤジの典型に思える。髪を短くされた娘たちが反抗するのも当然だろう。でも父のスパルタ特訓が娘を愛するがゆえとわかる場面では滂沱の涙。男子優勢の社会に生きる女の子は本当に大変だ。親離れした長女が頂点に上り詰めるために再び父親に頼る後半は、女優たちが体を張ったアクションを披露。試合シーンは手に汗握る迫力だ。27キロ増減という驚異の肉体改造をした父親役のアーミル・カーンの腹部の脂肪の揺れにも感動した。
昨今のパワハラ問題も想起させるインド発女子レスリング奮闘記
女性は家で炊事洗濯をしていればいい。年頃になった娘はさっさと嫁にやる。そんな男尊女卑の風習が根強いインドにあって、2人の娘を世界的な女子レスリング選手へと育て上げた父親の大奮闘を描いた実話だ。
スポ根映画の王道とも言うべきストーリーに、フェミニズム的な視点を加えた点が見どころ。父親の猛特訓に辟易した娘たちが、親の決めた相手と結婚させられる友達から「あなたたちが羨ましい。お父さんが将来のことを考えてくれている」と言われ、心を入れ替えて前向きにチャレンジしていく姿にはホロッと涙が出る。権威主義的な国立スポーツ・アカデミーの横やりも、日本の女子レスリングのパワハラ問題を想起させてタイムリーだ。