オズランド 笑顔の魔法おしえます。 (2018):映画短評
オズランド 笑顔の魔法おしえます。 (2018)ライター3人の平均評価: 3.7
いつもと同じ波瑠と、いつもと違う西島秀俊。
シリアスなキャラで、眉間にシワが寄ってるイメージの西島秀俊が、お茶目な上司キャラを演じることで、トニー・レオン主演のコメディを観る感覚にも似た本作。熊本県民におなじみ三井グリーンランドを舞台に、朝ドラ以降、映画女優としてピンとこない波瑠演じるヒロインの直球な奮闘記だ。西島演じる上司の過去があまり見えないことや、西島同様、あまりに明るいキャラゆえに心配になる橋本愛など、芸達者の共演も魅力だけに、連ドラとして見たかった感もアリ。基本いい人しか出てこない作品だが、(役柄的に)中村倫也にとって、『星ガ丘ワンダーランド』に続き、遊園地は鬼門スポットのような気がする。
生き生きと仕事をする“顔”に味あり
恋人と一緒にいたいから同じ会社に就職した……というヒロインの初期未熟度設定が低すぎて、大人の観客には感情移入までに少々時間がかかるものの、気持ちの良いヒューマンドラマであるのは間違いない。
仕事に取り組む姿勢や、やりがい、同僚との関係性などが熟成されていくヒロインの成長劇は清々しいし、熊本ロケによる空気感の温かさも魅力。笑いと涙の場面もうまい具合に配置されている。
生き生きと仕事をしている“顔”を、きっちりつくって見せた俳優陣は、いずれも好演。主演のふたりはもちろん、岡山天音、橋本愛も”味のある”と表現したい好助演で、印象に残った。見終わって、ちょっと気分が上がる良作。
恋愛よりも仕事に情熱を注ぎたい女子もいるよ
希望と異なる職種に回された新卒女子・クルミの成長物語は、驚きこそないが安定した作り。映画やドラマにロマンス要素が求められる点に不満を抱いていた身としては、仕事のみで成長するヒロイン像が好ましい。西島秀俊が上司を演じているので「もしや?」な予感はするが、クルミが失敗や小さなやりがいを体験しながら自分でも気づいていなかった情熱に火をつけていく過程は、就活に疲れた女子大生や人生になにかしらの悩みを持つ人に生きるヒントを与えてくれそう。主人公を波瑠が爽やかに好演。岡山天音や故郷愛で出演したと思わしき橋本愛ら脇役陣もテーマパーク職員らしさをにじませていて和む。オズランド、行きたくなりました。