スパイナル・タップ (1984):映画短評
スパイナル・タップ (1984)ライター2人の平均評価: 4
愛さずにはいられない男たち
個人的にロブ・ライナー監督といえば、2作目『シュア・シング』派だったが、年齢を重ねるうち、そのユルさに気付きながら、愛情が増すスルメなデビュー作。『俺たちポップスター』など、フェイク・ドキュメンタリーの先駆けとしてのスゴさはもちろん、初期ビートルズ路線のバンドが流れでヘビメタ路線に進む感じや、“ボリュームの目盛りが11”のアンプ、キース・ムーンやジョン・ボーナムが元ネタなドラマーの怪死ネタなどは、何度観てもツボる。そして、チープトリックが元ネタな“フェイマス・イン・ジャパン”。“リアル スパイナル・タップ”となった『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』を踏まえると、かなり激アツである。
時を経て薄まったものと、今だからこそ愛おしいもの
オーソン・ウェルズの火星人襲来のラジオ放送にもルーツがある、偽ドキュメンタリー=モキュメンタリーを「極めた」点で、映画史に残ると再確認。舞台裏の過激なすったもんだは、その後に作られた多くの「バンド映画」に影響を与えた事実も実感できる。
悩ましいのは、34年前の作品を「現在」観るという感覚。やはり全体に多少のレトロ感、古臭さはあり、時を経てカルト的な輝きは弱まったと感じる。それでも、明らかに刻印されているのは、スタッフやキャストがいかに楽しみながら作ったかという「現場感」(実態は不明だが…)。ゆえに最初から最後まで、現代の映画では希少となった微笑ましさ、そして愛おしさが溢れ流れるのだった。