告白小説、その結末 (2017):映画短評
告白小説、その結末 (2017)ライター2人の平均評価: 3.5
衝撃の結末よりもその過程に興味を惹かれるポランスキー新作
80歳を過ぎてもますます創作意欲の旺盛な巨匠ロマン・ポランスキーの新作である。人気女流作家に近づく熱狂的ファンを自称する若い女性。ストレスと悩みを抱える作家にとって、彼女は唯一にして最大の理解者となっていくが、やがて裏に秘められた恐るべき別の顔が浮かび上がっていく。果たして、彼女は何者なのか…?という心理サスペンスだ。
脚本も演出も細部に至るまで徹底してロジカルに組み立てられているが、それゆえに恐らく中盤辺りで物語のカラクリに気付く観客も多いだろう。むしろ、どんでん返しへ至る過程で描かれる人間の心の深い闇、エマニュエル・セリエとエヴァ・グリーンの火花散る演技対決をじっくりと味わうべきだ。
二大女優のサドマゾ的バトルを通して描く創造をめぐる苦悩と狂気
まもなく85歳を迎えるロマン・ポランスキーが、『反撥』『袋小路』『ローズマリーの赤ちゃん』といった全盛期の作品群さえ思い起こさせるホラー風味あふれる心理サスペンスを仕上げた。母の不幸をモチーフに小説を上梓しスランプに陥った作家エマニュエル・サニエと、ファンを名乗って彼女に近づく謎めいた女エヴァ・グリーン。接近は、新作執筆を見据えた蜜月関係なのか…と思いきや、作家への「好意」はやがて「支配」へと変わり、常軌を逸したサドマゾ的な関係へと発展する。これは創造をめぐる精神状態のメタファーだ。創作の生みの苦しみを熟知し、作品に反映させてきた作家の老成ならぬ円熟を感じる。