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500ページの夢の束 (2017):映画短評

500ページの夢の束 (2017)

2018年9月7日公開 93分

500ページの夢の束
(C) 2016 PSB Film LLC

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

清水 節

『スター・トレック』に託し、大切な人へ想いを届ける一人旅

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

自閉症を抱えた20代女性が、姉との関係性に葛藤し、伝えきれない思いをあるものに託す。それは愛する『スター・トレック』の公募脚本。感情の発露に難のあるスポックこそ、彼女の代弁者だ。直接パラマウント本社へ持参することになる、数百キロの一人旅で出くわす災難は、御都合主義で生ぬるいとしか言いようがない。しかし、世界的な言語ともいえるSFドラマをモチーフに「物語」という形に託して自らの手で届ける行為を通し、大切な人への想いを伝えようとする話法に打たれる。そしてこのヒロインを“特別な役”だと感じて好演した、ショウビズ育ちの元名子役ダコタ・ファニングの内面を窺わせるエピソードも愛おしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

『宇宙戦争』に巻き込まれた少女が、「宇宙大作戦」沼に落ちる

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作『セッションズ』同様、ベン・リューイン監督が描く他者とのコミュニケーションをめぐる物語。決して悪い邦題じゃないが、自閉症のヒロインが自身を落ち着かせるためのまじないとなる、「宇宙大作戦」でおなじみのセリフ「Please Stand By(そのまま待機)」の原題が素晴らしい! そんな「スタトレ」小ネタは気づかなくてもスルーできる程度だが、カークとスポックのキャラと関係性を理解していた方が、より胸に響くことは確かで、警官役のパットン・オズワルトがとにかく美味しい。とはいえ、ロードムービーとしてはかなり既視感もあり、残念ながら同様のテーマを扱った『ブリグズビー・ベア』には劣る。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

“危うさ”で成立する愛すべきヒロイン・ストーリー

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 物語の推進力となるのは、自閉症のヒロインの危うさ。施設外へ飛び出し、無謀な旅に出る彼女の行動がスリルを醸し出し、ヒヤヒヤしつつ最後まで見守ってしまう。

 『スタートレック』に対するオタク的な愛情や情熱は伝わってくるし、それが破天荒な旅を引き起こす点には説得力がある。彼女と他者との関係が、もう少しそれと結び着いて欲しかった歯がゆさはあるものの、それでも爽やかな感動をあたえるのは間違いない。

 何より本作はD・ファニングあっての映画だ。実年齢的には大人だが子役の頃のあどなけさも残す、安達祐実的な(?)独得のアンバランス。映画の魅力である“危うさ”は、彼女の個性が発する”危うさ”でもある。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

天才少女の着実なキャリアの積み重ね方が、とことん愛おしい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

子役時代にその天才ぶりが激賞されたダコタ・ファニングだが、最近は妹、エルの活躍ばかりが目立ち、やや影が薄かった。しかし今作を観ると場面場面の繊細な表情の作り方で、地道に演技力を磨いていたことがわかる。演じるウエンディが、ある才能(「スター・トレック」の脚本を書く)に秀でつつ、その才能が認められるべく孤独な旅に踏み出す姿に、天才子役が大人になる道のりを重ると、じつに灌漑深い。そしてこの道のりは、職業や国境、性別を超え、自分の生き方に迷う人々に強く訴えかける部分もある。トレッキーのネタは最低限に抑え、主人公の危なっかしい旅路をハラハラしながらも応援し、見守ることのできる、素直で前向きな一作。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

「スター・トレック」が大好きな女の子が幸せになる話

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 自閉症のため他の人々と一緒に何かをするのがうまくいかないところのある主人公が、「スター・トレック」のオタクで、「スター・トレック」の脚本コンテストのために脚本を書き、ケースワーカーの息子や偶然に出会う警察官とも「スター・トレック」を介して接点を持つことが出来る。つまり、人々が生活する一般社会の中では機能しにくい主人公が、それとは別のネットワークを見つけて、その中で他人と繋がったり、何かを表現したりしていくという物語。この映画は、そんな主人公に可愛らしいダコタ・ファニングを配役し、彼女に常にキュートな服を着せ、彼女の暮らす世界を明るい色彩に満ちたものとして描いてくれる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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