若い女 (2017):映画短評
若い女 (2017)ライター2人の平均評価: 4
ある意味、ダメ人間への応援歌
『若い女』というよりも『痛い女』。そもそもヒロインのポーラは、若いと呼ぶには微妙な年齢である。これは人を型にはめてカテゴライズする社会への、皮肉や批判をこめたタイトルだ。長年付き合った恋人に捨てられ、着の身着のまま路上へ放り出されたポーラ。唯一の肉親である母とは絶縁状態。たった一人で生きていかねばならないが、感情の起伏が激しくて口やかましくて気まぐれで傷つきやすくて繊細な彼女は、なかなか人とうまくやって行けず社会に馴染めない。そんな女性が地に足をつけて自分の居場所を探していく物語。危なっかしくてハラハラさせられっぱなしだが、しかし自分の人生をガムシャラに突き進もうとするその勇気に励まされる。
額の傷、そして心の傷が癒えるまで
額に大きな絆創膏を貼ったヒロインが、息継ぐ間もなく話し続ける。そんなオープニングから、愛すべきダメ人間映画の匂いをプンプン匂わせる本作。
悪態をつく、嘘をつく、どうでもいいことを延々と話す……カメラはそんな主人公の顔を表情とともにとらえ続ける。ダメな人間ではあるが、否定はしない、その視線の温かさや、ユーモアによるくみ具合が巧い。
ダメ人間の印のような額の傷が消えていくとともに、”若い女”ゆえの傲慢さも薄れていく。そこで影響してくる他人と交流のエピソードにも味があり、ジワッとしみてくる。NYインディーズの名作にも似た、人間観察の鋭さ。ここには確かにそれがある。