彼らの原発 (2017):映画短評
彼らの原発 (2017)新鮮かつ原初的なドキュメンタリーの醍醐味がある
象徴的に言えば、ここは「3.11以前」の日本社会が温存されている場所ではないのか。もちろん住民の意識差はまちまちで、不意打ちのように魅力的な顔が映る。同時に「住んでる人間でないとわからん」一筋縄ではいかない複雑な現実が無加工に近い状態で圧縮されている。
カメラの向こうから“普通の男子感”出しまくりな口数の少ないこの若い監督は「愚者のふりをした賢者」かも。エゴが見えない自然体の佇まいでコミュニティの中にするっと入りこみ、普段喋らない重要な本音をポロッと喋らせる。ラフな撮影と編集の中に宝石のような瞬間が多々あり、レイヤーを掻い潜って世界を発見していく過程が生っぽく伝わってくる。シメは三上寛!
この短評にはネタバレを含んでいます