マダムのおかしな晩餐会 (2016):映画短評
マダムのおかしな晩餐会 (2016)![マダムのおかしな晩餐会](https://img.cinematoday.jp/a/T0023403/_size_640x/_v_1542345081/main.jpg)
ライター2人の平均評価: 3
今なお残る階級格差と女性の呪縛を風刺したブラックコメディ
中年の危機で自信喪失しかけた大富豪のマダムが、にわかに注目の的となった使用人のメイドに嫉妬。リベラルを自負する彼女の特権階級意識が頭をもたげ、抑えきれないジェラシーが暴走していく。21世紀の今も歴然と存在する階級格差を痛烈に皮肉ったブラックコメディ。と同時に、持つ者と持たざる者に関係なく、社会の枠組みの中で「こうあるべき理想」を押し付けられる女性の悲哀も浮き彫りにする。つまり、マダムとメイドは表裏一体なのだ。思いがけず注目され恋に落ちることで、女性としての自我と誇りに目覚めていく年増のメイドを演じるロッシ・デ・パルマがチャーミング。あえて観客の想像に委ねたラストは賛否が分かれるだろう。
富と名声にまみれた世界を斜め上から見おろしてます
富豪の2番目の妻アンが上流階級のルール(?)のこだわったことで起こる騒動は、富と名声に支配された世界の薄っぺらさをカリカチュア的に描いた快作だ。王族の一人という付加価値をつけられたためにスノッブな男に言い寄られるメイドのマリアをめぐるリッチな人々の思惑や言動が滑稽だし、彼女が階級を飛び越えるのではと不安がるアンの狭量さに呆れる。気取った世界に放り込まれても庶民的な価値観を崩さないマリアの異星人のような魅力が輝き出す展開に思わず快哉! アルモドバル作品でおなじみのロッシ・デ・パルマが演じるマリアは、個性的な外見で強烈な印象を残す逸材だが、本作では観客のハートを独占する共感性の高い名演を披露する。