家へ帰ろう (2017):映画短評
家へ帰ろう (2017)ライター2人の平均評価: 4
他者の痛みや苦しみに思いをはせることの大切さ
ホロコーストを生き延びたユダヤ人の老人が、70年以上ぶりに命の恩人との大切な約束を果たすため、移住先のアルゼンチンから故郷ポーランドへと一人旅をする。我が子からも煙たがられる頑固で気難しい老人の、胸に秘めた切なくも熱い想いに思わず涙する名編だ。中でも印象的なのは、旅の途中で出会ったドイツ人女性とのエピソード。若い世代に罪はないと分かっていても、やはり嫌悪感は抑えられない。そんな彼の頑なな心を少しずつ解きほぐす、女性の真摯で思いやりのある姿勢が胸を打つ。これはドイツと同じく戦争加害者である日本人も肝に銘じたいところ。他者の痛みや苦しみに思いをはせる。それだけで世界は少しでも良くなるはずだ。
老人の終活から浮かび上がる過去の痛みと思いやり
登場した瞬間から仏頂面の主人公を見て、意地悪じいさんの話?と不安になるが、さにあらず。袖振り合うも多生の縁そのままの旅先の出会いや「リア王」を思わせる末娘との関係を描きながら、老人アブラハムの人生を掘り下るロードムービーだ。ロードムービーの醍醐味は旅する当人の内省や見知らぬ人との交流にあるが、本作も裏切らない。アブラハムが故郷ポーランドを捨てた理由や再訪の目的が徐々に明らかになり、胸がきゅっと締め付けられる瞬間の連続! 特に印象的なのが若きドイツ人女性との出会いで、アブラハムの心の傷がむき出しになり涙。彼の終活でもある旅の結果は映画を見てのお楽しみだが、温かい気持ちになるのは間違いない。