レプリカズ (2017):映画短評
レプリカズ (2017)ライター3人の平均評価: 2.7
文字通り、家族の「再生」を描いたB級SFエンターテインメント
人間の「心」をアンドロイドに移植する研究を続けていた科学者キアヌ・リーヴスが、交通事故で亡くした妻子のDNAからクローン人間を作成し、そこにデータ化された元の記憶や人格を植え付けて愛する家族を「再生」しようとする。なんとなくSF映画の古典的カルト作『ニューヨークの怪人』(’58)を彷彿とさせるお話だ。一応、人を人たらしめるものとはなんぞや?という大きなテーマはあるものの、しかしストーリーがどんどん飛躍していくうちにウヤムヤとなるのがご愛敬(笑)。いろいろと突っ込みどころは満載だが、いわゆるトンデモ系B級エンターテインメントとして気軽に楽しめる作品ではある。
暴走するのはキアヌだけではなかった!
劇場未公開ではもったいない秀作『トレイター 大国の敵』のジェフリー・ナックマノフ監督作ではあるが、『エンド・オブ・キングダム』の脚本家だけに、正直マジなのか、ふざけてるのか、困惑させられる展開が連続! 暴走しながらも、幼稚でドジっコだったりする主人公の神経科学者だが、それをキアヌ・リーヴスが演じることで、さらに困惑スパイラル! 『JM』な世界観で、『フェイク・クライム』の巻き込まれキャラ再び、というノリだ。さらに、ヨーロッパ・コープの主要株主である上海ファンダメンタル・フィルムズが製作に入り、プエルトリコ・ロケということもあり、全編に渡って奇妙な空気感が包み込んでくれる。
やはりキアヌは怪作的珍品がよく似合う(誉めてます!)
人間の心をコンピュータに転移させる実験に始まり、とんでもなく危険な状況になだれ込む流れは良しとして、いちいち起こることが唐突で、脚本(セリフ)もヤッツケ感が強いため、キャストからも演技の戸惑いが伝わる。しかし、そんな戸惑いと好反応を起こすのがキアヌ、なんである。異世界レベルの決断なども、この人が真面目にやると、それらしく見えるから不思議。キアヌの演技に乗せられて、細部のネタもセンセーショナルで面白くなってくるのだ。つまり、冷静な判断では作品自体の評価は低いが、最後までツッコミどころも楽しみながら飽きさせない逸品。本来にじみ出るはずの、人間のモラルなど深いテーマも、ゆるくスルーされて逆に潔い。