パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー) (2018):映画短評
パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー) (2018)ライター4人の平均評価: 3.3
下ネタとバイオレンス満載のパペット版フィルムノワール
ジム・ヘンソン・カンパニーが制作した大人向けのパペット版フィルムノワール。現代のロサンゼルスを舞台に、ニヒルなパペット私立探偵と人間の熱血女刑事がコンビを組んで連続パペット殺害事件の謎に迫る。キュートでほのぼのとしたパペット映画なのに下ネタギャグと残酷バイオレンスが満載!というギャップが見どころなわけだが、このジャンルにはピーター・ジャクソン監督の『ミート・ザ・フィーブルズ/怒りのヒポポタマス』という恐れ知らずの罰当たり映画がございまして、さすがにあの毒気には敵わないというのが正直なところ。もうちょっと開き直っても良かった。とりあえず、おバカ映画としては気軽に楽しめます。
あらゆる面でちょっと中途半端かも
予告編を見た『セサミストリート』製作陣が激怒したとかで、大暴れを期待しすぎたかも。マペットをさまざまなマイノリティになぞらえてダイバーシティーの重要さを訴えるのが狙いだろうが、お下劣ギャグやパロディを前面に押し出しすぎ。個人的にはくだらない笑いは大好きだけど、「アハハ」で終わり。マペット界の巨匠を父に持つB・ヘンソン監督にとってマペットは家族同然であり、彼らの可能性の拡大を目指したのだろう。でもギャグやメッセージがなんとなく中途半端で、もったいない感が否めない。ただM・ルドルフやJ・マクヘイルの安定したコミックリリーフぶりで星1個追加。
マペットでハードボイルドだど!
「ハッピーデイズ」が元ネタ思われる懐かしドラマ「ハッピータイム・ギャング」をめぐる連続殺人事件を追う、マペット版ハードボイルド。トゥーマッチなセックス&ドラッグ、ヴァイオレンス描写は、明らかに製作者サイドの狙いであって、ラジー賞6部門候補とはいえ、別に映画自体が破綻してるわけではない。メリッサ・マッカーシー以上にハジけた役回りのエリザベス・バングスに爆笑し、『ザ・マぺッツ』シリーズ以上に、『ミート・ザ・フィーブル 怒りのヒポポタマス』寄りな仕上がりもたまらない。おまけに、これが10年越しの企画だったという事実を踏まえ、エンドロールのメイキングを観ると、妙に泣けてくる。
パペットなのにきっちりフィルム・ノワール
パペットと人間の俳優の共演で、主人公はパペットなのに、きっちりフィルム・ノワール。魔性の女、ファム・ファタールもパペット。それだけで名作になれるのに、そこに子供っぽい下ネタを大量投入して、ラジー賞に作品賞、監督賞など多数ノミネート。しかしそれも想定内なのだろうと思ってしまうのは、エンドクレジットの背後に映し出されるメイキング場面で、その種のシーンを撮影しているスタッフたちが心の底から楽しそうだから。監督はジム・ヘンソンの息子ブライアン・ヘンソン。やりたいんだからしょうがない。そんな映画に全力投球している女優たち、メリッサ・マッカーシー、エリザベス・バンクスらの好感度がますますアップ。