ビリーブ 未来への大逆転 (2018):映画短評
ビリーブ 未来への大逆転 (2018)ライター3人の平均評価: 4
エンタメとしては少々不親切だが、力作
米最高裁の最年長者である女性判事ルース・ベイダー・ギンズバーグは、いかに男性優位の法と戦ってきたか? 本作のドラマの重点はそこにある。
1970年代まで性差別を容認する法律があったことも驚きだが、それを崩すのがいかに大変なことだったのか、という点にも驚かされた。ミミ・レダー監督らしい骨太な演出は、そんな苦闘の歴史をくっきりと伝えている。
法律が正しく描かれることや、事実に正確であることにこだわったためか、法廷でのクライマックスは複雑で、どこにゴールがあるのか見えづらいが、それでもパワフルな物語であることは間違いない。ギンズバーグのドキュメント『RBG 最強の85才』と併せて見たい。
男女同権を勝ち取ってくれた諸先輩に感謝!
実在するスーパーヒーローRBGことジャスティス・ギンズバーグの誕生を描く痛快作だ。ハーバード大教授が女性を“嬢ちゃん”扱いする時代なので、前半は頭に血が上るシーン多数。二等市民扱いに耐えながら戦うヒロインをF・ジョーンズが手堅く演じ、共感度大。後半の軸となる裁判は有名な案件なのでハラハラはしないが、男女平等が当然と考えさせるシーンをいくつも挟み込み、RBGが決意を新たにする過程をわかりやすく伝える演出もいい。男女同権を勝ち取った諸先輩に感謝する気持ちが湧く映画だ。とはいえ、日本では政治参画や企業の重役ポストにおける女性比率が圧倒的に低いわけで、「日本の夜明けは遠いぜよ」と思ったのも確か。
性差別の解消は、女性だけでなく男性も生きやすくする
86歳の現在もアメリカの最高裁判事を務める女傑ルース・ベイダー・ギンズバーグ。ハーバード大学のロースクールを卒業しながらも、女性ゆえ弁護士になる夢を諦めざるを得なかった彼女が、性差別を解消するための第一歩として取り組んだ裁判を描く。その肝となるのは、法律が男女に同等の権利を保障することで、女性だけでなく男性も生きやすくなるということ。この基本原理は、ほかのあらゆる差別に当てはめることが出来るだろう。誰かの権利が向上することで失われるのは、差別主義者の他人を虐める権利だけなのだから。アクション映画のイメージが強いミミ・レーダー監督は、折り目正しいドラマ演出で新境地を開く。実に爽快な作品だ。