燃えよ剣 (2020):映画短評
燃えよ剣 (2020)ライター3人の平均評価: 4
分断された幕末の動乱に現代日本の混迷を映し出す
幕末の動乱を駆け抜けた土方歳三と新選組の足跡を描く司馬遼太郎原作の大型時代劇。現代日本における政治の混迷を尊王派と佐幕派に分断された幕末の世相に投影し、国の将来を憂いて大義と理想に殉じた男たちの苦悩と生き様を通して、今の我々が学ぶべきものを見出そうという原田眞人監督の意図は分かりやすい。土方歳三役で寸分の隙も無い見事な殺陣を披露する岡田准一を筆頭に、近藤勇役の鈴木亮平や沖田総司役の山田涼介などキャスティングも文句なし。ただ、当時の複雑な政情を背景にした群像劇を2時間半にまとめるのは無理があったのか、どうしても全体的にダイジェスト的な物足りなさは否めない。
三条ストリートのならず者の信念に迫る
新選組副長、土方歳三を今描くことの意味を考えつつ見たが、“バラガキ(=ならず者)”の面にスポットを当てている点が面白い。
理想を抱いても感情で動くことはある。感情で生きていても理想を優先することはある。バラガキが筋を通すとき、双方が成立する人間性。“鬼の副長”のイメージでとらえられがちな土方歳三を違う目で見ることができた。
一歩引いて見ると、土方歳三が極細のロープの上を歩き続けていたこともわかる。いつ落ちてもおかしくない細い道を太く描き切った原田監督のダイナミズムあふれる演出や、バラガキの信念を体現した岡田准一の骨っぽさに熱くなる。昔も今も、時代を動かすのはならず者なのかもしれない。
超骨太
『関ヶ原』『日本のいちばん長い日』に続く原田眞人監督の“日本の変革期3部作”のラスト。
岡田准一に加えて柴咲コウ、鈴木亮平と大河ドラマ主演俳優が3人もそろったほか、芹沢鴨を怪演する伊藤英明、沖田総司役の山田涼介、徳川慶喜役の山田裕貴などなどどこを見ても主演級がズラリとそろいました。
原田組時代劇でおなじみの国宝・世界遺産でのロケーションとも相まって、非常にゴージャスな時代劇になっています。
新選組は6年間を駆け抜けましたが、映画自体は駆け足にならずにじっくりと見せるものになっています。