ペトラは静かに対峙する (2018):映画短評
ペトラは静かに対峙する (2018)「父」から澱みが渦巻き流れる
これは文字通りユニークな映画。第2章→第3章→第1章→第4章……という行きつ戻りつのチャプター構成は、巧緻というより朴訥なケレンとでも言うべき語りの妙味がある。お話の内容は、ヒロインの画家が自分のルーツを掘っていくと、そこは人間の業が沈殿したヘドロ状態。クサい物の蓋を開けてしまって、もう悪臭は収まらないぞというものだ。
とにかく問題人物の老いた男(象徴的に「父」のポジション)が、世間から尊敬される芸術家とのギャップも含めて気持ちいいほどのクズ。家父長的なパワハラ批判というより、ギリシャ悲劇との比較が納得。何千年も我々を悩ませる宿業を突き放して観察したブラックな不条理コメディの感触もあり。
この短評にはネタバレを含んでいます