LORO 欲望のイタリア (2018):映画短評
LORO 欲望のイタリア (2018)ライター3人の平均評価: 4.3
尋常じゃないドライブ感で突っ走る二部構成
さすが、ソレンティーノ監督作。イタリア元首相・ベルルスコーニの映画と称しながら、前半は美女とドラッグで、彼に近づこうと暗躍する青年実業家が主人公。若き日のベルルスコーニと重なるとはいえ、過去作の人生の甘美や悲哀などを一切感じさせないパリピなカットの連続に圧倒される。左翼政府を倒そうと企むベルルスコーニの奮闘が描かれる「第二章」に突入し、若干落ち着くものの、美女盛りはマシマシ。妻との大喧嘩に笑わせられたと思いきや、終盤はおなじみのソレンティーノ節。マフィア絡みの描写など、そこまで悪人に描かれていないことには賛否あれど、作品自体のドライヴ感に振り回される面白さを評価。
権力者のおこぼれに群がる人々の醜悪さは世の東西を問わずですな
金と女と権力への飽くなき欲望に駆られ、数多のスキャンダルで悪名を轟かせながらも、なぜか民衆に愛された成金の大富豪にしてイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニ。そんな希代の怪物が政権の座を追われてからの私生活に焦点を絞った本作は、老いてなお虎視眈々と政界復帰を狙う彼の実像に迫りつつ、そのおこぼれに与ろうと群がる魑魅魍魎どもの狂乱ぶりを描くことで、腐敗と堕落の蔓延した現代社会の世相を浮き彫りにしていく。十字架のキリスト像を象徴的に用いた『甘い生活』オマージュをはじめ、ソレンティーノ監督の演出にはフェリーニ的な風刺が冴え渡り、2時間半の長尺を一気に魅せる。
ソレンティーノ印で造形された「矮小な巨悪」の味わい
太陽に照らされた海に浮かぶ船室で野心ギラギラの青年(R・スカマルチョ)が腰を振りまくる――そこに流れるストゥージズの「ダウン・オン・ザ・ストリート」。えっ、スコセッシ!? と思わせるパワフルな疾走感で「ブンガブンガ」を含む前半を駆け抜けるが、そこからある種の「メロウ」に傾くのがソレンティーノだ。
怪人ベルルスコーニのゲスな虚栄と色欲のぶ厚い皮に埋もれた「虚無と純情」。『イル・ディーヴォ』『グレート・ビューティー』『グランドフィナーレ』の合わせ技といった趣で、やはりフェリーニの残響がある。廃墟から掘り出されるイエス像は『甘い生活』のヘリコプターで吊り下げられたキリストが意識されているだろう。