ゾンビ-日本初公開復元版- (2019):映画短評
ゾンビ-日本初公開復元版- (2019)ライター2人の平均評価: 5
昭和の映画館へタイムスリップできる貴重な115分!
そうそう、これ、これですよ!僕らが映画館で初めて見た『ゾンビ』は!確かにゾンビ現象に妙な背景説明を加えた冒頭クリップはロメロ監督の演出意図に反するだろうし、肝心のゴア・シーンは静止画処理されてしまっているしと、今になってみればトンデモハップンな日本公開バージョンなのだけれど、しかしこれこそが日本人にとっての『ゾンビ』原体験。瞬く間に昭和の映画館(筆者の場合は世代的に名画座)へとタイムスリップできるプレシャスな115分に胸が熱くなる。時代を感じさせる当時の字幕翻訳まで再現してくれた、今回の復元版の制作関係者には感謝の言葉しかない。
あの日の記憶が蘇る、驚異の再現率!
40年前のファーストインパクトを再現するという、愛される『ゾンビ』だからこそ許される企画だが、冒頭の惑星爆発から「19XX年」に始まるテロップという、日本独自の編集に反応してしまう性。異常なグルーヴ感で突っ走る『ダリオ・アルジェント監修版』をベースに、R指定が存在しない時代に静止画にしてしまうなどの残酷描写の処理に、ショッピングモールに馴染みのない時代の“商店街”などの字幕表記も、一気に1979年に戻してくれる。とにかく驚異の再現率の高さといえるが、幕(スクリーンマスク)の存在が当たり前じゃない時代、いきなり幕が閉じ、余計に終末感を醸し出していたラストカットを再現できないのが惜しまれる!