ペット・セメタリー (2019):映画短評
ペット・セメタリー (2019)ライター4人の平均評価: 3.3
“子ども”をキーワードにした、味のあるリメイク
メアリー・ランバートによる最初の映画化もよくできていたが、こちらのリメイクもヒケをとらず。赤子ではなく、お姉ちゃんの方を怖いキャラに変えて、前作とは一風異なる恐怖と哀切さを喚起する。
“死”に畏怖と興味を抱き始める年ごろの女の子を物語の中心に置いたことで、彼女を生き返らせる父親の業の深さが鮮明に出た。家族の悲劇も、それにより痛切さを増す。
そんな設定を含め、何よりホラー映画的なのは“子ども”がコワい……ということ。動物の仮面を被った子どもたちが葬送行進をする儀式的な描写はもちろん、“恐るべき新世代ロックバンド”と評されるスタークローラーの、前作のラモーンズの主題歌カバーにニヤリ。
“あの主題歌”もしっかり流れる!
暴走トラックの被害に遭うのが、二人姉弟の弟から姉になるだけでなく、オリジナルに比べて悲壮感に欠けるものの、「これはこれでアリ!」と思わせるエンディング。しかも、妻の“座敷牢”なトラウマ話を詳しく描写し、悪名高き(個人的には大好物!)、ラモーンズの同名主題歌をStarcrawlerがカヴァーするなど、オリジナルに対するリスペクトもしっかり感じる。さらに、アリ・アスター風味にグロ描写と、2019年にリメイクする意味合いを明確に! 後半の展開が駆け足すぎるなど、いろんな意見があるかもしれないが、エドワード・ファーロングのアイドル映画としてもダメダメだった『ペット・セメタリー2』よりは全然良作だ。
設定の変更が賛否を分ける大きなカギ
埋葬した死体が生き返るという不思議な土地に、交通事故で亡くなった我が子を父親が埋めたところ、邪悪で狂暴な怪物として蘇ってしまう。スティーブン・キングの小説の2度目の映画化だが、今回はその我が子が幼い弟ではなく小学生の姉というのがミソ。満足に言葉を喋れない年齢の幼児よりも、父親との会話によって「家族」や「死」について深く掘り下げられるからと制作サイドは明かすが、しかしそのせいで’89年版の核でもあった「得体の知れない恐怖感」が著しく削がれ、やけに説明臭くなってしまったことは否めないだろう。ただ、ラストのオチも改変されているのだが、こちらはブラックなユーモアすら感じられて秀逸だった。
"執着"と"後悔"が凄惨な恐怖を招く
原作通り死を巡る忌避についての物語でありつつ、今回の映画化は、それよりも"執着"と"後悔"についての物語を描くことを目指したのではないか。度を超える執着、拭いきれない後悔、それに囚われてしまうことの恐ろしさを描く心理ホラーになっているのだ。善人役も悪人役もこなす演技派2人、ジェイソン・クラークとエイミー・サイメッツが起用されたのは、その人間心理をリアルに描くためだろう。
また、同じ原作の映画化作、89年の「ペット・セメタリー」と比較するのも一興。かなり雰囲気の異なる2作の、どこがどう変わってどんな効果が生じているのか。前作へのオマージュとアレンジぶりも興味深い。