サイレント・トーキョー (2020):映画短評
サイレント・トーキョー (2020)ライター2人の平均評価: 2.5
渋谷のシーンを臨場体感するだけでも、観る価値はある
東京の中心地に、クリスマスイブに爆弾を仕掛ける犯罪劇ということで、冒頭からしばらく事件の核心が見えない不安感が続く。出てくる人物も、事件にどう関わるのか謎なムードを充満させ、滑り出しは快調。
目を見張るのは、渋谷駅とスクランブル交差点のシーンで、セットとは思えない完璧な再現度! 驚いてる間もなく、さらに激烈なサプライズも繰り出され、作り手の強い覚悟を感じた。
ただ、核心に近づくにつれ、映画としての盛り上がりも収縮。前半の俳優たちの演技も、ありきたりな意外性を狙った印象と化し(本人たちではなく演出の問題)、もう少し違ったアプローチだったら…など、いろいろモヤモヤ感に包まれた。
とにかく、ハチ公前パニックに尽きる!
日本映画には必要といえる大作感に、それを99分という尺で仕上げた点では評価するが、あまりにミスリードを誘うキャラやセリフが多すぎる脚色に問題アリ。波多野貴文監督による『SP野望篇』の六本木ヒルズ・パニックを期待させる演出も、時折挿入される字幕などによって途切れ、なかなかノレないのも事実だ。しかも、キャラの人物像を掘り下げが浅く、演技派・実力派キャストの見せ場も薄れてしまった。渋谷ハチ公前のリアルな状況下からの、「これがカタストロフィだ!」と言わんばかりのパニック描写への流れは素晴らしいが、やっぱりモヤモヤが残ってしまう犯人の動機など、終盤にかけての尻つぼみ感は否めない。