星の子 (2020):映画短評
星の子 (2020)ライター4人の平均評価: 3.5
家族という宗教
新興宗教という一見、特異な世界を描いているように見えるが、テーマは前作『MOTHER マザー』と地続きのように見える。方や暴力、方や信仰で子供を支配する。家族という最もミニマルな共同体による宗教だ。家族円満のためにも”信じる者は救われる”のだが、一度疑念を抱いたら抜け出すのは厄介。特に強烈な世帯主のいる家庭ならどこでもあり得る話として、新興宗教をフラットな目線で描いている。誤解を恐れずにいえば、芸能一家で育った大森監督らしい視点と言えるだろう。そして子供の人格形成において、育ってきた環境がいかに重要かを考えさせられるのだ。
佇んでいるだけで画になる芦田愛菜の存在感
宗教団体を題材に、「何が正解で、何が間違いか?」「信じるとは?」「家族とは?」「幸せとは?」といった、さまざまな疑問を投げかけてくる問題作。思春期特有の心の揺らぎを表現する芦田愛菜はそこに佇んでいるだけで、画になるほどの存在感を放ち、終始シリアスじゃないところや、宗教団体の青年部を演じる目だけ笑っていない黒木華と高良健吾の怪演などは評価したいところ。原作に近い作りであることは確かだが、余韻たっぷりのラストも含め、あまりに観客に委ねすぎており、映画としてモノ足りなさが残るのは事実。そういう意味では、大森立嗣監督の前作『MOTHER マザー』にも通じるところも。
15歳の少女の口には出さない想いが伝わってくる
宗教に没頭する両親と同じ家で暮らす、その宗教から距離を置く15歳の多感な少女は、日常の中で何を思い何を感じ、どのように生きるのか。脚本は、その細やかな感情の揺れ動きを、セリフではなく、小さなエピソードの積み重ねで描く。その脚本を体現する主演女優のたたずまいに感じ入る。
両親への複雑な思い。15歳らしい潔さ。それとは対極にある、学校と宗教集団という異なる集団での適応力。そして、本人の意識しないところでやっているのに違いない、生き延びるための技術。そうした主人公の複雑な内面が、彼女を取り巻く家庭、学校、宗教団体など、各種集団の特質を生々しく描く逸話の中で描かれて、切実に伝わってくる。
俳優芦田愛菜の初恋
”あやしげな宗教”にはまる両親と共に暮らす中学生。
そういうものだと受けれいて生きてきましたが、初めて“恋”を知った時、それまでの生き方を大きく揺さぶられることになります。
芦田愛菜が子役から、一人の俳優となってスクリーンに還ってきた一作はやはりただものでない映画となっていました。
大森監督は相変わらずの攻めの姿勢を感じるテーマ選びですが、荒々しさは一歩、二歩後ろに下がり、ある種の温かみを感じさせる映画にしてきました。
親子という点で言えば今年の「MOTHER」とも同じ要素がありますが、こうも違うかと、監督のふり幅に驚かされます。
芦田愛菜と大森監督の次一手は果たして?