ハリエット (2018):映画短評
ハリエット (2018)ライター2人の平均評価: 4.5
「こんな人がいたのか」と唸らせる、オスカー候補らしい役と演技
この主人公の強すぎる意志と、恐れを知らぬ行動力は、いったいどこから来るのか? そんなことが頭を駆け巡りながら、世界の「間違った常識」に素直に「NO」と言う、人間として真っ当な生き方で、有無を言わせぬ感動が導かれた。「あの時代、あの境遇で、こんな人がいたのか」という実話の驚きもプラス。周囲の悲劇も容赦なく描く演出からは、作品の「本気度」も伝わる。
主演シンシア・エリヴォは荒削りな部分はあるにしても、パッションの伝え方は直球。いい意味で演技の初々しさが好印象だ。叫びを歌に込めたシーンは深く静かに心に響くが、ブロードウェイの大スターである彼女の真髄は、今作とともにぜひ動画などでチェックしてほしい。
本当の勇気と信念があれば人はここまでできる
最初の30分だけでも十分映画になる、すごすぎる実話。だが、その後、話はますますすごくなっていく。時代は南北戦争の前、主人公はミンティという名の南部の奴隷。命をかけてまで、仲間のため、そして正義のために戦い続ける彼女を見ると、生ぬるい世の中に生きつつ、何かと言い訳ばかりしている自分たちが恥ずかしくなる。人は、本当にやると決め、勇気をもてば、ここまでできるのだ。彼女を静かに支える人たちにも心を動かされる。とくに奴隷経験のない黒人女性(ジャネール・モネイ)のキャラクター。あまり語られることのない、本当のヒーローは、歴史上にたくさんいるのだと、あらためて思わされた。