キネマの神様 (2021):映画短評
キネマの神様 (2021)ライター3人の平均評価: 3.3
映画の力と愛をどう受けとめるかは、人それぞれ
コロナ前後の現代パートから過去に移った瞬間、若き日の主人公を演じる菅田将暉の生き生き、溌剌とした存在感で一気に映画が動き出す。北川景子の堂々たる大女優っぷり、その時代感など、山田監督の撮影所への思い、青春時代の情熱がビビッドに再生されていく感触。
志村けんが生きていたら…と、その幻影と哀しさがまとわりつく。ただ沢田研二になったことで、大幅な改変でもっと自由に演じてもらいたかった気もする。撮影スケジュールなど複雑な事情は察せられるが。
登場人物たちの映画愛、映画を信じる心は熱く伝わる。日本映画の歴史を再確認する喜びもある。さらに一段上の「映画の力」を感じられるかどうかは観る人それぞれだろう。
山崎貴監修による『三丁目の夕日』感もアリ
『キネマの天地』から35年、山田洋次監督が松竹撮影所を舞台に描く群像劇。ギャンブル好き&借金まみれの主人公・ゴウが助監督だった過去を軸に、原田マハによる原作を映画愛たっぷりに大胆脚色。それにより、観て書く側の視点から作り手の視点に変わったことは興味深いが、そのぶん永野芽郁演じる食堂の看板娘をめぐる菅田将暉と野田洋次郎のラブバトルなど、既視感ある展開になったのは否めない。山崎貴がVFX監修で参加したことによる『ALWAYS三丁目の夕日』感もあり、かなり安パイな仕上がりだが、スター女優を演じる北川景子が妙にハマり役なことに驚き! 彼女や先輩監督など、誰がモデルなのか、想像しながらも楽しめるだろう。
輝きと喪失の物語
改めて言うまでもなく、志村けんさんの初主演作品として進められてきた企画。そんな、志村さんの急逝を受けて盟友・沢田研二が跡を継ぎ、映画を完成にこぎつけました。
新型コロナウィルス感染拡大による影響を映画全編に与え、山田監督はシナリオをリライトした部分もあるとのことで、それは終盤の展開に見ることができます。
また、映画が娯楽の王様と言われていた時代から現代までを描くことで、かつて映画が持っていた独特の輝きが今はもう無いことも描いています。
キャストでは”銀幕のスタア”を演じた北川景子が抜群の存在感でした。映画への愛と色々なモノが今はもう無いことを感じることができる一本でした。